ラトビアのギンツ・ジルバロディス監督によるノー言語アニマルオンリー3DCGアニメーション作品!
【あらすじ】ある日大洪水に襲われた黒猫。偶然流れてきたボートにとび乗り、故郷を離れ旅に出る。ゆく先々で出会う動物たちとともに困難を乗り越えてゆくが・・・!?
ネタばれ感想
ズバリ「ひんやり、夢心地」になれる映画でしょう。あらゆるタイプの水の描写があり、猛暑の今の時期に涼をとるのにぴったり。
一見わかりやすいようで実はわかりにくく作られているので、エンタメ的にものすごくおもしろいね!というお話ではない。なんせセリフも説明も一切なし。
ストーリーというよりは不思議で美しい世界観や音楽を楽しむタイプの映画。まるで夢の中に出てくるような風景に没入できます。
実際私はこんな感じの人っ子一人居ない壮大なのにどこか寂し気な水辺の光景を夢でよく見てました。
しかしこの映画、美しいけど水の恐ろしさを感じる映画でもあります。じわ、じわ・・・と水位が上がってきて逃げ場が無くなる描写にぞわっとしました。
荒れ狂う海や画面いっぱいの水・水・水。その中から巨大なクジラの様な生物がヌッと現れる。綺麗だけどちょっと怖い。
津波を彷彿とさせるシーンもありますので要注意です。
黒猫の旅の仲間は犬たち、カピバラ、ワオキツネザル、ヘビクイワシ。
やはり異種族だし動物なので初めはお互い無頓着なんですが、困難が彼らを襲うたびにまるで人間のように協力し合って難局を乗り越えていく。
リアルな動物として描かれているのでセリフを喋ったりはしないけど、ちょいちょい人間くさい行動をとるのが面白い。特にカピバラのマイペースでのんきなキャラクターがよかった。
ちなみにギンツ・ジルバロディス監督はカピバラリサーチのため伊豆シャボテン動物公園に行ったことがあるそうです。カピバラの鳴き声はイメージと違ったため子ラクダの鳴き声をあてているそう。
気になってyoutubeでカピバラの鳴き声を検索してみると、本物はだいぶキュートな感じ。一方「flow」のカピバラはおっさんっぽい。
でもこのおっさんっぽさがいい味出してたので子ラクダの声にして正解でしたね!
そして仲間ではないですが意味ありげに登場するクジラ(の様な生きもの)。猫を助けたりラスト近くで打ち上げられて瀕死の状態になってたりポストクレジットシーンにも登場したり。おそらく全部同じ子かな?
本当に夢の様な映画なので、登場する動物や起こる出来事などにどんな意味や心理が隠されているのだろうと気になってしまいます。
人類は何処に
人間が一切出てこないので人類滅亡後の世界を描いているようです。
飼い主がいたような形跡があるので滅亡したのは割と最近らしい。飼い主は相当なネコ好きと見え、庭に沢山の猫の像があります。
滅亡ではなく人類は地球の危機で別の惑星へ移住したというのもありえるかも?ペットや動物たちはおいていかざるを得なかったのかな、なんて妄想をしてます。
お気に入りのシーン
一つめは船でさまよっている時に半分水没した巨大な廃墟のような建物の中にボートで入っていくシーン。綺麗でゾクゾクしました。
沼や湖、川、海×巨大な人口建造物の組み合わせってなんだか恐ろしいのにジッと見入っちゃう不思議な魅力がありますよね。ダムとか。
もう一つ。ヘビクイワシが天に召されるシーンが綺麗すぎて泣けます。
急に猫もヘビクイワシも空中浮遊し始め、何事かと思っていたらヘビクイワシは光に包まれ消え、猫は地上に戻されます。あまりに神々しいシーン。音楽も良い。
それにしてもヘビクイワシが消えてしまったあのかりんとうのようなシルエットの巨岩群は一体何なんでしょう。初めの方からずっと登場してて、猫が気にしてましたよね。
よくみるとチベットの寺院風なモニュメント?や旗があり神秘的。
気になるラスト
仲間と離れ離れになってしまい水中を漂ってもうだめかというところで急に水位が猛烈に下がり始め、地上が出現。そして仲間と再会もできる。
これで一件落着かと思いきや鹿たちが大量に同じ方向に向かって逃げていくという不吉な前兆行動。
実はこの行動、初めの大洪水が押し寄せる直前に同じようなシーンが描かれていたんですよね。
そしてポストクレジットシーンで、水位低下で打ち上げられて瀕死だったクジラが泳いでいる姿。打ち上げられたクジラと同じ子かは不明ですが、世界はまたしても洪水にのまれてしまったのでしょうか・・・
クジラが助かったのは喜ばしいことですが、あの猫と仲間たちはどうなったのかな?と少々不安がよぎるラストになってます。
まとめ
ラトビア出身のギンツ・ジルバロディス監督の「flow」の感想でした。
メタファーに満ちていて、見終えた後不思議な余韻の残る映画でした!
監督のyoutubeチャンネルで「flow」の原型の様な7分32秒のショートアニメ「Aqua」が見れますのでflowにはまった方は必見。「flow」を見る前に予習で見るのもいいかもしれません。
寂しく孤独な雰囲気がたまらないアニメになってます。音楽もいいですね~
ただこちらも津波表現がありますので注意。
これを見るとやっぱり「flow」のラストシーンの後、またしても洪水が来たのかな・・・と考えさせられます。
「flow」がよかったので同監督の前作の「away」という映画も見ようと思ってます。
flow、away共に現在Amazonプライムビデオにて配信中です。
【Flowの作品情報】
- 監督 ギンツ・ジルバロディス
- 2024年制作
- ラトビア・フランス・ベルギー合作
- 1時間25分
- 第97回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞